遅れてきた初心者

僕が吹奏楽部に入部したのは、高校1年生の10月でした。

何か部活動やりたいな、と思って候補に挙がったのが吹奏楽部。
中学時代は音楽の成績が非常に悪かったので、かなり勇気を必要としましたが、なんとか一大決心です。
じつは4月に顧問のM先生に入部したい旨を申し出ていたのですが、文化祭の実行委員や家庭の事情もあって、ちゃんと入部できたのは文化祭が終わった秋深まる頃になったのです。

さて、入部はしたものの、その頃の吹奏楽部は生まれたての赤ん坊のようなものでした。
3年生はすでに引退していましたが、これからの部を引っ張っていくはずだった2年生も何故か、いなくなっていたのです。
あとで聞いたところでは、やる気がない部員を強制退部させたら一人も残らなかったそうで、残されたのは高校に入って楽器を始めた初心者ばかり。
1年生10人での再スタートとなりました。

そんな小所帯ですから、編成もメチャクチャです。
僕の希望パートはパーカッション(打楽器)だったのですが、あっさり却下されてしまいました。
僕がパーカッションを希望したのは、以前からドラム好きだったからなのですが、楽譜が読めなかったのも理由のひとつです。音階を考えずに済めば何とかなるだろう、と安易に考えていました。
それに加えて、自身のアンブシュアも問題もありましたしね。

4月に入部の申し出をした時には、僕のアンブシュアを見てM先生曰く、
「これじゃあ、ちょっと管楽器は無理かもしれんなぁ。」
と仰っていたはずなのですが、時が変われば事情も変わる、ということのようです(泣)。
で、先生が僕を部室に連れて行き、指さした楽器ケースの大きいこと・・・。

さぁ、チューバとの初対面です。見たことはありますが名前を聞くのは初めて。
チューバとは一番大きな金管楽器で、低音、いわゆるベースを担当します。
大きいので見た目は目立ちますが、音楽的にはあまり目立たない、でも縁の下を支える重要なパートです。
思わぬ展開に不安もありましたが、管楽器をやってみたい、という気持ちもどこかにあったんでしょうね。
とにかく頑張ってみようと思い、練習を始めました。う~ん、ポジティブ(笑)。

バリサク

チューバを練習する日々が続きますが、やはりアンブシュアの問題は、相変わらず悩みの種でした。
アンブシュアとは、マウスピース(楽器の吹き口)に当てる唇の形などをいうのですが、僕は前歯がタテに生えた、極端に悪い歯並びなものですから、マウスピースに唇を押さえつけていると、唇の裏がすぐに痛くなるんです。

我慢して練習していたのですが、唇の裏に傷が付いて口内炎のようになってしまったので、もう限界。
ついに、先生に楽器変更をお願いしました。
先生もさすがに納得して(とても残念そうでしたが)、すんなり配属替えと相成りました。
さて、念願のパーカッションになれたのでしょうか・・・?

先生が部室から重たそうに持ってきたのは、これまた大きくて四角な楽器ケース。
さすがにチューバよりは小さいけど・・・。
「それは何?」
と僕の怪訝そうな顔に、先生は笑顔で説明しました。
「それじゃぁ、これをやってみよう。バリトン・サックスっていうんじゃ。」
「これもサックス? で、でかっ!」
その頃はサックスといえばアルトとテナーを見たことがあるくらいで、その区別もわかってない状態です。
バリトンサックスなんて、存在自体知りませんでした。

大きな驚きとちょっぴり落胆の中で、僕の新しい担当はバリトン・サックスになりました。
やっぱり大きな楽器ということで、バリトンサックスも低音楽器です。
部所有の木管楽器では当時、一番大きな楽器でした。
先生としては、なんとしても低音が欲しい、ということだったのでしょうね。

結局のところ、僕の正式なパートは、卒業するまでバリサクでした。
しかし、チューバを吹くことが圧倒的に多かったりするのは、後日談になります。

不参加でも

岡山県では毎年11月に高吹連(岡山県高等学校吹奏楽連盟)主催の各校発表会「バンド・フェスティバル」が開催されます。
例年であれば、連盟に加盟している我が校も出場して、発表演奏をするはずなんですけど、この年は断念せざるを得ませんでした。

当時は初心者ばかりで基礎練習に明け暮れる毎日。まだ教則本の10ページ目をようやく超えたあたりじゃなかったでしょうか。
もちろん、楽曲演奏なんか夢のまた夢という状態です。これはもう、仕方ないですね。
とりあえず今回は見学ということで、倉敷市民会館まで部員みんなで出かけました。

初めて見て、初めて聞く他校の演奏。「これが同じ高校生なのか!?」と驚き、そして素晴らしい演奏に感動もしました。
一緒に行った部員全員がそれを感じたようで、
「来年は、《ドレミファソラシド》だけでもいいから、絶対参加しよう!」
と誓い合って家路についたのを覚えています。
「その時には、先生たちにも楽器を吹いてもらって、指揮台にはカーネル・サンダース人形(ケンタッキー爺さん)を置いて・・・。」なんて言い合いながらね。
今思い返せば、赤面ものの大計画。・・・実現しなくて、よかったかも(苦笑)。